プロジェクトストーリー03

札幌圏から道内の輝きを支えていくLNG火力発電

石狩湾新港発電所建設・運用プロジェクト

石狩湾新港発電所建設プロジェクト

2019年2月、北海道電力初となるLNG(液化天然ガス)火力発電所「石狩湾新港発電所」1号機が運転を始めた。進む既設火力発電所の経年化に対応し、燃料種の多様化や電源の分散化を図り、将来的にも電力の安定供給を確かなものとする新しい発電所だ。
エネルギーの大きな転換期を迎える中、一から創り上げられた発電所はさらなる進化を続けながら、札幌圏から道内の輝きを支えていく。

PROJECT MEMBER

  • 安藤 健

    石狩湾新港発電所
    環境技術課 副長

    安藤 健

    1993年入社

    化学工学科

  • 総合研究所
    エネルギー利用グループ

    山谷 一樹

    2009年入社

    建築学科

     

  • 服部 直

    土木部
    地盤耐震グループ

    服部 直

    2013年入社

    工学院
    環境フィールド工学修了

高い発電効率、運用性、環境性に優れた発電方式の導入へ

次代を見据え、世界トップレベルの技術を採用

石狩市から小樽市の海岸沿いに伸びる、明治の開拓期から残る防風林。その海側、小樽市銭函の広大なエリアにLNG火力発電所である石狩湾新港発電所は立地する。既設火力発電設備の経年化への対応として検討されたLNG火力は、燃料供給の安定性や経済性などに加え、二酸化炭素の排出量が少なく環境性にも優れた火力発電である。立地点としては、既設の大型火力発電所の多くが太平洋側に位置しているため、日本海側に設置することで電源の分散化を図り、電力の大消費地である札幌圏で、かつ資機材の荷揚に適した港湾インフラが整備されていることなどから石狩湾新港地域が選定された。現在は出力56.94万kWの1号機が営業運転中で、今後は2号機、3号機の着工を予定している。

1号機には、高効率と環境負荷の低減の両立が図られるガスタービン・コンバインドサイクル発電方式を導入。今回採用した最新鋭のガスタービンと蒸気タービンが、高い発電効率を実現し、メーカーと調整を重ねて詳細設計を行い、スピーディーな起動や出力調整により、電力需要への即応を可能にした。そして何より低炭素化に貢献している。

プロジェクトメンバーとして計画段階の早期からチームに配属され、環境アセスメント業務を担った安藤健は、営業運転開始後も発電所に勤務している。「運転開始からまだ2年しか経っていませんが、エネルギーと環境に関する社会情勢は急速に流れが変わってきています。1号機の運転から見えてきた、設備や環境アセスメントにおける改善点を今後着工予定の2号機にも活かしつつ、時代の流れを見極めながら、2号機以降はどのような電源にしていくのかも含めて考えていかなければと思っています」と話した。

環境を保全し監視していくことも安全運転の要

「発電所を新設する場合、環境アセスメントはとても重要な業務に位置づけられます。しかし火力発電所としては十数年ぶりとなるプロジェクトで、社内の経験者も少なく、法整備なども変わっているので、さまざまな知識や情報を学びながら仕事に向き合いました」と安藤。「過去の資料から最近の類似案件の資料などをできるだけ読み、調べ、どのように計画を進めていくのが適切なのかを探りながら、それぞれの課題や仕事に対応していきました」と続けた。とくに法令は刻々と変わり、現在もまた変わっているそう。それらに合わせ、こちらも逐一対応を変えていかなければならないのが大変だったという。今回のような大型プロジェクトでは大気からエリア周辺、海域にまで及ぶ広範囲において、水質や生態系、産業廃棄物まで多様な措置を講じる必要があった。それらの環境を保全し、監視していくことも、安全運転を支える要素の一つだ。

北海道のエネルギーを創り続けるために、進化を止めない

一から創り上げることへの情熱を燃やしながら

2015年にスタートした、4年半にわたるこの大規模なプロジェクトでは、発電所の工事と並行して、水路を挟んだ対岸にある石狩市のLNG基地においても、燃料設備であるLNGタンク2基の増設、発電所と基地を海底で繋ぐガス導管敷設などの工事が行われた。

服部直は、入社4年目にして石狩湾新港火力発電所建設所基地土木建築課に配属となり、3年間現場を経験した。「新規の発電所建設が限られている中、このようなプロジェクトに参加できる機会は多くはありません。建設所に異動となったときは驚きましたし、一方で不安もありました」と話した。主な仕事は、LNG基地に増設された、容量23万kLという国内最大級のNo.4LNGタンクの設計・工事管理である。その工種は、地盤改良、基礎抗打設、LNGの漏液を防ぐための土木構造物となる基礎版や防液堤のコンクリート打設など多岐にわたる。「直径91.9mにもなる基礎版においては、丸一日で10,000m³ものコンクリートを一括打設しました。打設にあたっては、打設にかかるヤードの取り合い、コンクリート品質管理等、事前に各所と何度も調整を繰り返しました。基礎版は、LNGタンクの基礎となる部分であるため、何か問題が発生すると土木工事はもちろん、機械工事の工程にも影響が出ます。安全・品質確保を常に念頭に置きながら、緊張感を持って現場を管理しました」と話す。コンクリート打設は、午前7時から始まり、翌日の明け方まで行われた。トラブルなく無事に打設を終えられたときは感無量だったという。また、日々の業務においても、専門的な知識が求められる場面も多く、自己研鑽に励む毎日であった。そのためプレッシャーも大きかったが、建設事務所から見えるLNGタンクが日に日に姿を変えていく様子に、強くやりがいを感じ、改めて自分が携わっている仕事に感動を覚えたという。

この一大プロジェクトについては、当時入社したてだった山谷一樹の耳にも入ってきていたという。「新しい発電所が建つかもしれない、という話を耳にし、いつかは自分もやってみたいと思っていました。その後、希望が叶い異動になったときは、とても嬉しかったですね」と話す山谷は、着工前の設計から竣工まで建設所の建築課に在籍した。担当したのは発電所本館、付属建屋に関わる計画・設計・工事監理であり、何十棟もの建物を建築し、その一棟一棟の完成に喜びを感じていたそうだ。そして自身初となる発電所建設に挑み、試運転で火が入った瞬間には胸が熱くなったという。しかしプロジェクトでの仕事は想像以上に厳しいものだった。「専門的なことが多く、一から学び直しながら仕事をするという状態でした。専門書を読み込み、計画をまとめては、上司や先輩に上申し、そこでのアドバイスをもとに、また調べて軌道修正をして進めていくという日々でした。さらに先輩たちに追いつけるようにと、並行して資格取得の勉強もしていました。今思い返すと、ものすごく忙しい現場で勉強漬けの6年間でした」と振り返り、「異動前には、正直なところもう少しできるかなと思っていた」と笑う。多くの知見が身に付いた中で、一番力になったことはと問うと「困難にぶつかっても、たとえそれが何度でも、とにかく諦めないこと」と答えた。プロジェクトをやり遂げた自信が、それからの仕事に繋がっているのだという。

試練を乗り越え、力が付いたと語る山谷を見て、安藤は「計画段階では電力他社への出張や発電所の景観設計に関わる部分などで、現場が動き出してからは発電所建設所での設計・工事に関わる環境保全の業務において、山谷さんと一緒に仕事をしていました。長期にわたるプロジェクトのいろいろな場面で彼の考えや意見を聞く中、どんどん頼もしい存在になっていくのを感じていましたね」と笑顔を見せた。「建築課の依頼主は安藤さんたち火力部なので、要求にしっかり応えられる提案をしなければと。それではダメだと言われることもありましたけど」と山谷も笑った。

志をひとつに、学び続けていく仕事がやりがい

営業運転開始後はそれぞれ別の部署へと異動した服部と山谷。服部は「プロジェクトではそれまで経験が無かったコンクリートの分野について、基礎から学び、社内外の方々に教えていただきながら専門知識を身に付けることができました。目標も設け、資格取得も叶いました。幅広い業務に関わる土木部門では仕事ごとに学ぶことがありますが、一から学んで戦力になりたい、戦力になれるという自信も今回のプロジェクトで得ることができました」と話し、今後も自己研鑽に励み、北海道電力の土木技術者として一目置かれる存在に成長したいと語った。山谷は「このプロジェクトで先輩や上司、関わった方々から学んだことを今度は自分が教える側になり、次の世代に繋いでいきたい。建築部門で、電力マンの志を伝えていけたらと思っています」と力を込める。真面目に、着実に。個々が学び続け、進化し続ける風土が生きている。その個々の力がチームとなり、エネルギーのこれからを創造する原動力になる。

※掲載している内容は取材時点のものであり、所属・組織名が現在の名称と異なる場合があります。